ああ、おいしいなぁ

愛犬ティーモと愛猫バジルと車と建築と

無鄰菴

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今日は、京都東山南禅寺近くにある無鄰菴に行ってきました。

この無鄰菴に来るのは2回目です。

ウン十年前、妻との最初のデートらしいデートで来て以来です。

 

幕末、明治に活躍し、首相にもなった山縣有朋の京都の別邸であり、近代的な和風庭園が有名な、国指定名勝です。

僕は、東山を丸ごと借景とし、滝や川という大きな動きがあり、ダイナミックでパースペクティブな魅力を持つこの庭園が好きです。

山縣有朋という人は、特別好きでも嫌いでもありませんが、この庭園の構想を立てたという事において、尊敬します。

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入口付近の待合

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玄関前

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庭への入り口

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母屋脇の延段

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苔むした灯篭と石積みから伸びるシダ

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庭園の中央を流れる川と向こう岸の茶室

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芝の手入れ中の庭師の方

この庭園の特徴として、東山を大胆に借景として取り入れている事や、三段の滝から流れる川という要素と共に、日本庭園としては珍しい芝生があることです。

しかも庭園の中央付近のほとんどが芝生広場になっている。

こういう大胆さもこの庭園の大きな魅力の一つです。

実は、今日、無鄰菴に来たのはセミナーに参加してのことでした。

京都造形芸術大学通信大学部主催のセミナーで、座学と庭に出ての実習の二部構成になっていました。

僕は一般参加だったので気楽にお話を伺っておりましたが、大学の講座として参加されている方達はレポートを提出するため、真剣に学んでおられました。

で、この庭園に関する知識も、その講座において学んだことです。

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川と芝生と東山

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一方こちらは、紅葉と苔の伝統的な庭

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庭園奥の三段の滝

この無鄰菴は、もともと隣が無いという意味を持つ名前だそうですが、今はお隣さんがたくさんおられます。

毎日、この庭をまさに借景できるというのは、とても贅沢なことでしょう。

幕末の動乱で荒れ、遷都により求心力を失い、人口も25万人へと半減した明治の京都の復興を東山の開発に求めた当時の京都府知事北垣国道が、琵琶湖疎水の建設により、当時鴨東(おうとう)と呼ばれ田畑が広がった東山一帯を工業地帯としようと計画したそうです。

しかし、疎水計画は水力発電所という形に帰結したため、結果として水車を利用した工業地帯の必要性は薄れ、土地を買い漁っていた人たちは慌てます。

その土地を別荘地として開発するようにしたのは、誰のアイデアだったのかはわかりませんが、そのモデルハウスとして、この無鄰菴が造営されたという話はとても面白いものでした。

今では、観光地京都においても観光の名所として東山一帯は人気がありますが、その元を辿ればこの無鄰菴や疎水計画というものがあるのですね。

などと偉そうに書いておりますが、すべて今日の講座で教えていただいたことばかりです。(笑)

座学の後は実習ということで、庭園に出てお庭掃除を体験いたしました。

この広い庭園を維持管理していくということがどういう事か、その一端を体験したわけです。(偉そうにすいません)

具体的には、苔の上に落ちた枯葉やキノコを取り除いたり、通路の砂利が跳ねて苔の間に落ちているものを通路に戻したりという事をしました。

途中、キノコ狩りの様相を呈してきましたが、無事、苔を荒らす事もなく掃除ができました。

ああ、大きな塵取りに集めた枯葉やキノコの写真を撮っておけば良かった。

数十人が一斉に掃除していたので、普通に観光しておられた方から、「ボランティアですか?」と聞かれたりしましたが、いえいえお金を払って体験させていただいているのでボランティアではありませんというのも変ですし、「庭掃除を体験しているだけです。」と曖昧な返事を返してしまい微妙な空気が流れてしまいました。(笑)

こうして、庭の掃除などを実際に体験すると、想像以上に無鄰菴に対する親しみが沸いてくるものです。

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例によって関守石ですので通行禁止です

それにしても、庭師の特権で関守石を超えて奥の庭に入れるというのは、なかなか気分が良いものですな(あ、またまた偉そうに庭師を騙ってすいません)

実習後、再び母屋の二階で、今度は庭師の方からの説明や質疑応答の中、一年を通じて色々な手入れが必要であることや、特殊な手入れ方についても聞くことができ、とても勉強になりました。

特に、東山の姿が効果的に見えるように、境界沿いの樹木の高さを剪定する微妙さに、何気なく見えるものの裏にある様々な工夫や苦労というものを感じました。

そのほかにも、松の葉の剪定にハサミを使わないそうです。

時間はとても掛かるのですが、ハサミを使わないことで柔らかい表情になるそうです。

サツキも植わっているのですが、こんもりしたサツキの姿ではなく、地を這うような姿に整えておられるようで、これは山縣公の考えを今も生かしているとのこと。

サツキの目立つ姿が東山の風情をスポイルすることを嫌ったようです。

また、川沿いの石積みのあちこちにシダが生えているのですが、これも伝統的な日本庭園には見られない手法で、山縣公のアイデアとのこと。

作庭された小川治兵衛との考えの違いなどもあったようですが、山縣公の大胆な発想と小川治兵衛の豊富な知識や経験とのコラボレーションの結果、互いの良さを引き出した形となったのではないかと思います。

建築家安藤忠雄氏も公演で語っておられましたし、多くの建築家の逸話にも出てくることですが、優れた施主による考えというものが有り、それに応えるだけの実力を持つ芸術家、造園家、建築家などが居てこそ、後世に残る作品が生み出されるのだと思います。

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母屋二階からの景色

母屋二階の窓の手摺はなかなか大胆なデザインですが、こちらは元々からあったものだったのか聞くのを忘れてしまいました。

講座が終わり、再び庭園に戻り、庭園カフェで一服。

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お薄と抹茶アイスモナカ

今日は、概ね涼しかったのですが、やはり一仕事?終えた後のアイスとお薄は最高ですな。

上品な味で、とてもおいしかったです。

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そんな最中(もなかでは無くさなかです)も庭師の方は川底を丁寧に掃除されていました。

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帰り際に、見送ってくれた亀

お茶をいただき、帰ろうとしたときに、川に亀が。

そして、カメラ目線で見送ってくれました。

この川の主でしょうか?

また、来ます。