やじろべえめがね
先日から、僕の体の一部となったやじろべえめがね。
どこが気に入ったのかを書き留めておこうと思います。
やじろべえめがねと愛用の三菱ピュアモルト2mm芯ホルダー
木と金属の組み合わせ繋がりで並べてみました。
やじろべえめがねとの出遭いに付いては、以前にこのブログで書いたのですが、WEB検索中に偶然見つけました。
いわゆる一目惚れでした。
まず、そのユニークな形状、特に木の実にも似た木製のモダンに惹かれました。
紫檀削り出しで手作りされたモダン
そして、細くしなやかに伸びたテンプル。
クラシカルな一山に、実用性を持たせたプラスティック製の鼻当てという組み合わせ。
一山(いちやま)部分のアップ
プラスティック製の鼻当て
これらのディテールが気に入ったのは勿論ですが、それらをユーモラスで愛嬌のある形にした辻岡さんの造形センスにやられました。
辻岡眼鏡工業さんのサイトにある、ドイツ製のコーヒーミルのハンドルの上でバランスを取っているやじろべえめがねの写真が全てを物語っていると思います。
また、辻岡さんのブログに書かれているものづくりへの情熱、そして手作りめがねという作り手の顔が見えるモノの魅力もあります。
送っていただいたサンプルの中に、リムの周囲が彫刻されているものがあり、これがまたクラシカルなスタイルにぴったりのイメージだったので、僕のやじろべえにも彫刻を施してもらっています。
ブログによると朝日模様というそうです。
いわゆるセミオーダーの形だと思いますが、リムの天地をさらに1mm小さくしてもらったり、ブリッジを小さくしてもらったり、そういう調整というのは普通では難しい注文だと思います。
そういったやりとりを、メールや手紙で時間を掛けて打ち合わせ、後は、辻岡さんの腕を信じて任せるという。
なんだか、すごく面倒かもしれませんが、それがとても楽しいという経験をさせていただきました。
僕の仕事は、建築の設計ですから、原則的にオーダーメイドです。
ですが、ディテールのほとんどの部分を既製品で作られている事が多いのが現実です。
また、住宅を建てるのではなく売るという言葉に表れているように、カタログで間取りや仕様を選び、ほとんど車のオプションを選ぶような感じの家の建て方があります。
というよりも、ほとんどの家はそうして建てられているでしょう。
材料を安く調達できたり、安定した生産体制など、コストパフォーマンスという意味において間違いなく高いと思うし、安く良い家を建てるという事に何の否定もありえません。
ただ、ほとんどの人にとって、一生に一度の家を建てるという体験を比較的簡単に済ませてしまうというのはとても残念な事だと思っています。
時間を掛けて、それこそ一点ものの家を専門家と時間を掛けて作り上げていく喜びを、多くの人に知って欲しいと思うのです。
じっくりと話し合って決めていく中で、取捨選択のめりはりを付けることで、本当に自分達にとって必要なものとそうでないものが見えてくると、コストダウンも出来るのです。
愛着を持って暮らしていただくためにも、「作り手の顔が見える家」というものに価値を見出せてもらえるような設計者でありたいと思っています。
今回のめがね作りを通じて、その思いを強くしました。