ああ、おいしいなぁ

愛犬ティーモと愛猫バジルと車と建築と

第九

今日は、弟が初めて第九のソリストとして歌うというので、聴きに行きました。

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弟は、プロのテノール歌手で、(財)神戸市演奏協会の神戸市混声合唱団にも所属しています。

その神戸市演奏協会の神戸市室内合奏団の演奏、コーラスは神戸市混声合唱団で、その神戸市室内合奏団音楽監督である巨匠ゲルハルト・ボッセ指揮によるベートーヴェンの第九という、とても密接な奏者達による演奏でした。

場所は神戸文化ホール 大ホール。

ここも彼らの本拠地と言っても良い場所のようです。

第九は、日本では年末に恒例となっているプログラムですが、大編成のオーケストラと大合唱団による演奏がほとんどで、今日のような小編成オーケストラと小編成の合唱団での演奏は少ないと思います。

指揮者のゲルハルト・ボッセさんは、ドイツ人でライプツィヒ放送交響楽団やゲヴァントハウス管弦楽団コンサートマスター、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の第一ヴァイオリンなどで活躍されたヴァイオリニストで、近年はゲヴァントハウス管弦楽団での指揮の他日本のオーケストラで指揮をされることが多く、この神戸市室内合奏団の音楽監督でもあります。

日本での人気は高くて、今日の演奏も東京から来られている方も多かったそうです。

第九は、数多く演奏されているためか、僕の勝手な印象として言うと個性的すぎるというか、部分的に誇張された演奏が増えているように感じています。

テンポを凄く遅くしたり、ものすごく音を伸ばしたり、指揮者も歌舞伎の大見得のような感じの指揮ぶりであったり。

それはそれで良い部分もあるのですが、若干食傷気味というのが本音でした。

それに対して今日の演奏は、まさにスタンダード。

しかも、ただスタンダードというわけでは無く、フレーズの一つ一つが丁寧に演奏されていてとても気持ちのこもった、まさに魂の第九というタイトルどおりの演奏でした。

感情剥き出しが魂がこもっていると言うことでは無いと思うのです。

むしろ、感情を冷静にコントロールしながら、集中力を切らさずに隅々まで目が行き届いた演奏こそ、緊張感のある魂のこもった演奏だと思います。

今日の演奏は、まさに後者。

ボッセさんは高齢のため、足が不自由で、杖をつきながら指揮台に上られました。

それでも、しっかりと台上で客席に向き、大きな拍手で迎えられました。

指揮の間は椅子に座られていましたが、その年齢を感じさせない指揮でした。

小編成のオーケストラの良さは、室内楽が一番立体的に音楽を感じるのと同じ理屈で、大編成のオーケストラよりも、一つ一つの音の出所がわかり易く、立体的な音になるという事だと思います。

また、ボッセさんの流儀でもあるのかもしれませんが、オーケストラにある程度自由に演奏させるという感じがしました。

そして、練習中に相当しっかりとした指導がされているんだろうと思うのですが、一つのフレーズの音の膨らませ方とおさまり方が絶妙で、とても豊かな感じがするのです。

第九の3楽章は、とても好きでいつも楽しみにしています。

とても気持ちの良いテンポの演奏で、うっとりさせてもらいました。

本当にこの楽章は夢のような美しさです。

4楽章

いよいよ合唱団とソリスト達の出番です。

ソリストの方々も、ともすれば我がが我ががと前に出てバトルロイヤルのような第九もあるように思うのですが、今日の第九ではソリスト同士の掛け合いでの音の出し入れなんかが絶妙の間合い。

それは、合唱団にも言え、オーケストラとの音のバランス、全体のハーモニーを強く意識しているんだろうと思いました。

ところで今日の僕にとっての主役は弟です。

テノールの出番になると、どうしても緊張してしまいました。

親父の演奏会でもいつもそうでしたが、どうしても身内の演奏というのはリラックスして聴けないもんです。

当の本人は、いつも通り落ち着いて良い声を出せていたと思います。

正直、神戸市室内合奏団にしても神戸市混声合唱団にしてもマイナーな存在だと思いますし、僕自身聴くのは初めてでした。

ここまでレベルの高い演奏のできるオーケストラであり合唱団であるとは、恥ずかしながら知りませんでした。

もっと評価されるといいですね。

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演奏会は、ボッセさんが何度もカーテンコールに応えるほどの大きな拍手で、大盛況のうちに幕を閉じました。

楽屋前で弟を待ち、その後弟と彼の彼女と奥方と僕の4人でJR神戸駅近くのカレー専門店で打上げしました。

これから、彼もどんどんと表舞台に立つ機会が増えることを祈ります。

そして、お世話になっている方々には、本当に感謝です。